東塔【国宝】

薬師寺は1300年の歴史のなかで幾度も火災や地震、台風により多くのお堂が失われました。そのなかで東塔は、薬師寺創建当初から唯一現存し、平城京最古の建造物です。

東塔には屋根が6つありますが、内部は三層になっており三重塔です。下から1,3,5番目の小さな屋根は裳階もこしと呼ばれる飾り屋根で、各層に裳階がつけられた塔は薬師寺だけです。屋根の大小がおりなすバランスはとても美しく、 「凍れる音楽」と称されます。 東塔はこれまでに何度も部分的な修理が行われてきましたが、平成21年(2009)より史上初の全面解体修理に着手し、令和3年2月15日竣工致しました。
東塔相輪上部の水煙は、他の塔のものと比べて実にデザイン性に富んだものになっています。笛を吹きながら踊る奏楽天人、花籠を捧げる天人、蓮のつぼみを捧げ持ちながら降りてくる天人ととても躍動的です。
東塔の内陣には、文化勲章受章者の中村晋也氏による釈迦八相像のうち因相の四相が祀られています。

釈迦八相のうち【因相の四相】 中村晋也作 令和5年安置
入胎・受生・受楽・苦行

『薬師寺縁起』によれば、創建時の東塔と西塔の内陣には、お釈迦様のご生涯をあらわした「釈迦八相像」が祀られていました。塑像(粘土)で作られた、当初の釈迦八相像の多くは破損してしまいましたが、残った残欠や記録から岩窟や山川を背景にお釈迦様をはじめ多くの仏像が祀られていたことがうかがえます。釈迦八相とは、お釈迦様のご生涯の中でとても重要な八つの場面をいいます。
東塔には、お釈迦様が釈迦国の王子として生まれながらも、出家し悟りに至る前半生が表現されています。