「笑う門には福来る」という諺があります。いつも笑い声が満ち、和気あいあいとした家には、自然と幸福がやってくると言う事です。
「笑」はにこやかな顔で喜んで口を開いて笑う事で、転じて花が開く事、又は咲いた花のような華やかな笑顔を「花笑みはなえみ」と言います。
 象形文字である「笑」は、髪を長くした若い巫女の象形で、笑う事を意味しています。笑の漢字を分解すると、「竹冠たけかんむり」と「よう」に分けられ、「竹冠」は、長い髪の象形が次第に変化したもので、蕾が開いた美しい姿を現します。「夭」は、にこやか、のびやか、顔色を和らげるすがたで、若くして美しい形です。

 お釈迦様は、「笑容美語しょうようみご」とお話になりました。これは、顔に微笑みを浮かべて優しく語り掛ける人、所謂菩薩様の事で、善を積んで得られる功徳です。この言葉は、『佛説最上根本大樂金剛不空三昧大教王經』等に登場します。
 表情によっては、どんな感情を抱いているか、おおよそその心を感じ取ることができます。私たちは、言葉を交わさなくてもコミュニケーションを取り、表情によって、ほぼ全ての感情を伝達することが可能です。意識無意識に拘わらず、への字の口や釣り上がった眉、皴を寄せた顔などの表情は、雄弁に感情を物語ります。心理学的に基本的な表情は、学習によるものではなく先天的なものであって、世界中の人類に共通するものです。怒り、軽蔑、嫌悪、恐れ、喜び、悲しみ、驚き等の表情は、身体動作や姿勢を組み合わせると限りがありません。

 笑っている時の姿を想像してみて下さい。顔はどこを向いているかと言うと、必ず上を向いています。その顔は明るく輝いています。だから「面白い」のです。態々わざわざお化粧をしなくても、上を向くだけで顔も白くなってくるのです。日常生活を送る中で日頃から笑う事は、若返りの秘訣であると思っています。

合 掌



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