五戒ごかいとは、佛教において信者が守るべき基本的な五つのいましめです。
戒は、佛教徒である人が守らなければならない戒めです。律は、人である限り必ず守らなければならない法律です。人生を善く生きるべき指標であり、道徳です。
今回は「不殺生ふせっしょう」「不偸盗ふちゅうとう」「不邪淫ふじゃいん」 「不妄語ふもうご」「不飲酒ふおんじゅ」の五つのいましめの内、「不邪淫」についてお話します。

不邪淫を犯すことは、家庭という建物の中に強盗が入った事と同じです。その強盗は邪淫する本人です。もはや信頼するパートナーではなく、完全に敵であり生存を脅かす攻撃者、生きる活動の妨害者となります。 邪淫をした相手に恐怖を感じたり嫌悪感を持つ事は当然の事なのです。だから邪淫を厳しく戒めます。

お釈迦様の教えは、古今を問わず、洋の東西を超えた普遍性を持ったもので現在の私たちにも強く訴えるものです。
例えば、お釈迦様の教えを簡潔にまとめたスッタニパータには、次のように説かれています。

他人ひとから誉められようと、そしられようと
柱のように泰然とし
欲情を離れ、もろもろの感覚器官をよく静めている人
賢者は、かれを聖者であると知る。(105)

のように実直で
よこしまな行いを嫌い
正と不正とを吟味して選別する人
賢者は、かれを聖者であると知る。(106)

自己を制し、邪な行いをせず
若くても、中年でも、自制しており
他人に挑発されず、他人を挑発しない人
賢者は、かれを聖者であると知る。(107)

性交渉を断ち
若い女性にも心惹かれず
おごりと怠惰から遠ざかり、束縛から解き放たれた人
賢者は、かれを聖者であると知る。(108)

世の中を理解し、最高の真理を見
激流と大海を渡り
束縛を破り、依存することなく、煩悩の汚れのない人
賢者は、かれを聖者であると知る。(109)

「新編スッタニパータ ブッダの<智恵の言葉> 今枝由郎訳」より

合 掌

写真は、第二結集(お経が編纂された地)の地ヴァイシャ―リ



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