1月8日は令和6年甲辰きのえたつ歳 干支のお話をさせて頂きました。今回は、薬師寺にいる竜の子どもたちを紹介します。

 最初に長男である①贔屓(ひき、びし)は、玄奘三蔵院伽藍の正面で二基の石碑を背負っています。形状は亀に似ているので、亀と間違えている人が多くおられますが、実は贔屓です。何処へ行くにも重い荷物、特に宝物を背負いゆっくり歩きます。人は早く宝物を自分の手元に置きたいので贔屓を引っ張る為、重心が崩れて大きくて重い荷物が倒れてしまいます。そこから「贔屓の引き倒し」という諺が生まれました。ひいき●●●(贔屓)しすぎて、却ってその人に迷惑や不利な結果をもたらすことになってしまいます。

 次男の②螭吻(ちふん)は、屋根など高い場所に登って、遠きを望み四方を見渡します。波を起こし、雨を降らし、火災から建物を護ってくれます。金堂と大講堂の屋根の棟の東西にいる鴟尾(しび)が竜の次男である螭吻です。

イメージ画像:竜のこども 次男②螭吻



 三男の③蒲牢(ほろう)は、鐘を撞くとよい音が出るように願い、梵鐘の竜頭りゅうずとなっています。形状は竜に似ていますが、身体は小さく、吼えることが大好きなことから梵鐘の上に乗っています。

イメージ画像:竜のこども 三男③蒲牢



 四男の④狴犴(へいかん)と五男の⑤饕餮(とうてつ)と六男の⑥睚眦(がいし、がいさい、やず)は薬師寺には不在です。

 七男の⑦狻猊(さんげい)は、形状は獅子に似ていて2本の角を持ち鬚を生やしています。煙や火を好み、香炉の脚部で座るのを常としているので、香炉を支える足となりました。金堂の薬師三尊様の前に鎮座しています。

イメージ画像:竜のこども 七男⑦狻猊



 八男の⑧椒図(椒圖、しょうず、じょくと)から十一男の⑪嘲風(ちょうふう)も不在です。

 十二男の⑫負質(ふしつ)は、やはり玄奘三蔵院伽藍の正面にある石碑の最上部で文字を見ています。石碑の上部に頭部を左右下向きにして片足で玉を抱き、大好きな文字を見ています。

イメージ画像:竜のこども 十二男⑫負質



 十三男の⑬螭首(ちしゅ)は薬師寺にはいませんが、神社や寺院の手水屋で参拝の前に手や口を漱ぐための手水舎に竜の彫刻があり、水平に頭をもたげ足を踏ん張って口から水を出しているのが螭首です。

 辰歳に因んで、身近で活躍している竜の子どもを探してみてください。

合 掌



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